退任に寄せてのメッセージ

藤井 靖久先生

ふじい やすひさ

東京医科歯科大学病院 病院長
東京医科歯科大学大学院腎泌尿器外科学 教授

退職のお祝い・森尾先生との出会い

森尾先生、ご退任おめでとうございます。長きにわたり、小児科学、免疫学、教室、病院、大学など、多くの領域、組織の発展に多大な貢献されましたことに深く敬意を表します。

森尾先生は、大学の5期先輩でクラブも異なりますので、学生時代からしばらくは直接の接点はありませんでした。ただ、私にとって森尾先生との出会いは「点と点が線で繋がる」ような驚きをもったものでした。

教養学部の時、バドミントン部の同級生(高校時代に県代表にもなった強豪選手)曰く「もっと強い先輩がいて東医体で勝ち続けている」。
医学部に進み御茶ノ水に来た頃、格好良い若い男性医師を時々見かけました。ハンサムでスタイルが良く、髪型や服装もセンス抜群で、まるで医師役の俳優のようでした。
研修医になった頃、小児科の同級生曰く「モリオ先生というとてつもなく優秀な先輩がいる」。

これらが同一人物であることを知ったのは随分と後で、その時の衝撃は今でも忘れられません。

森尾先生の思い出

2014年3月、森尾先生から、数日前から肉眼的血尿があると連絡をいただき、外来で拝見させていただきました。年齢や症状から尿路系の悪性腫瘍の可能性があること、膀胱鏡を含めた精査が必要であることをお話ししました。翌日、膀胱鏡を施行しましたところ、膀胱内に5㎜程度の乳頭状腫瘍を認めました。「膀胱腫瘍の多くは悪性である。その70-80%は非浸潤性で生命予後には直結しないが再発は少なくない。外観からは悪性度は低いと思われるが経尿道的膀胱腫瘍切除は必要である。その病理結果で確定診断されその後の方針が決まる」と説明しました。

森尾先生は自身の教授選の真っ最中であったにもかかわらず、動揺や悲嘆の様子は全くなく、その後の手術を含めて一貫して冷静でした。人生における安全管理、危機管理について十分に準備され、覚悟をもって人生を過ごされている方と敬服いたしました。

幸い、病理検査では非浸潤性、低悪性度で、現在まで再発なしで経過しています。

最後に

最近は大学統合の会議で森尾先生と同席させていただくことが多くなりましたが、先生の国際的な視点、見識は卓越しており、月並みですが「余人をもって代えがたい」以外の言葉を思いつきません。4月以降もご活躍いただけるとのことで安堵しております。
(本稿は森尾先生の個人情報を含みますので、先生のご許可をいただきました)