森尾 友宏教授の退職に向けて
この度、無事退職を迎えられること、まことにお目出とうございます。
時を同じくして、小児科学教室の運営を通して、日本の小児医療の向上とともに、世界の先天性免疫異常症の診療向上に向けて携わった者として、心よりお祝い申し上げるとともに、長年にわたる先生のご尽力に敬意を表します。
東京医科歯科大学小児科学教室と京都大学小児科学教室とは関東、関西と距離的には大きな隔たりがありますが、共に免疫疾患を一つの重要課題として教室運営をする中、普段から人々の行き来もさかんです。このような中、小児医療の実践、教育、研究に向けて、切磋琢磨を積み重ねつつ、お互い協働してきました。
協働の中でも特に思い出に残るのは、森尾先生と協働して、2017年、一般社団法人日本免疫不全・自己炎症学会(JSIAD)を立ち上げ、なんとか運営を軌道に乗せることができたことかと思います。JSIADが対応する疾患は「先天性免疫異常症」であり、責任遺伝子と疾患の因果関係が明確であるという特徴があります。対応する疾患は、易感染性に特徴づけられる免疫不全症や自己炎症のみならず、自己免疫疾患、膠原病、アレルギー疾患、悪性腫瘍など多岐に及んでいます。従来の学会活動においては、これらの疾患は既存の学会において各々の視点を持って取り扱われてきましたが、それらをすべて統合し、かつ診療科の垣根を越えてフランクに議論する場が欠けていました。その中で、国際的には遺伝性免疫疾患(inborn errors of immunity: IEI)と呼称されるようになってきた「免疫応答の調節機構とその異常による疾患」という視点から、より充実した連携を模索するハブとしての役割を担い、広い視野からの科学の追究、レジストリー等を活用した大規模データを活用した最適治療への展開を行いたいという志を持って学会を立ち上げました。
初代理事長としての私には、学会としての組織作り、財政基盤の確立を行い、何とかよちよち歩きを続けることができるまでが精一杯でした。森尾先生には第2代理事長を引き継いで頂き、診療面・学術面・行政面などの様々な視点から、大きく実を結んで成長させていただきました。その結果として、様々な診療科から想定を超えた多くの先生方に学会員として参画を頂けるようになったこと、患者さん・ご家族からも大きな信頼を頂ける学会となっていることで、社会にも大きな恩恵を還元できるようになってきたと思います。本当にご苦労様でした。
この度ご退職ということですが、また新しい立場で、益々のご活躍をされることを期待しております。ご自身の健康に気を配りながら、引き続きよろしくお願い申し上げます。