森尾先生、このたびはご退任、心よりお喜び申し上げます。
私の森尾先生との出会いは、医師6年目の2008年、小児血液・腫瘍を志し聖路加国際病院で働き始めたタイミングで、当時の聖路加病院上司であった真部淳先生(現、北海道大学小児科)から「医科歯科に背が高くて格好よくて頭の良い、ズルい先生がいるから、行って勉強してきなさい」とご紹介いただいたことがきっかけでした。
毎週水曜日午後に小児科研究室で実験を学び、時に細胞治療センター会議に参加し、また聖路加の白血病患者さんに活性化T細胞(CTL)を培養し投与していただいたこと、そのすべてが驚くほど今の自分につながっています。
森尾先生に初めてお会いした際「実験記録(ラボノート)の大切さ」と「実験・研究に向いている人とそうでない人がいる」の二つのメッセージが心に残っています。ラボノートを丁寧に書く意識は、その後のシンガポール留学において最も私を助けてくれました。そして二つ目は、その先どうなるかわからない私への厳しい優しさだったのだと思っています。
6年間の留学生活では毎年結果が出ない私を励まし、帰国時には研究から離れずに臨床に戻りたい私に道を与えてくださいました。東京医科歯科大学小児科に入局してからの6年間、臨床では患者さんのために最善を尽くす姿勢、固定観念にとらわれず、しかし道理にかなった視点は非常に勉強になりました。また研究面では、10年先を見据えた目標(夢)を説得力をもって語り、その実現に向けて邁進する実行力に刺激を受け続けています。
「がんを細胞治療で治したい」という思いを持った私に、様々な形で機会を与え導いてくださったことに、心より感謝申し上げます。森尾先生と出会って、一つ一つがつながって今に至り、そして今は「第三者由来ウイルス特異的T細胞療法」実用化を達成し、10年先にさらにつながりをもって発展していくよう目指してまいります。
森尾先生の益々のご活躍とご多幸をお祈り申し上げます。これからもご指導のほどよろしくお願いいたします。