退任に寄せてのメッセージ

北畠 康司先生

きたばたけ やすじ

大阪大学大学院 医学系研究科 小児科学 教授

森尾友宏先生の後退官に際して 感謝の言葉

森尾 友宏先生、この度はご退任おめでとうございます。

2014年に教授に就任されてからの10年間、東京医科歯科大学小児科を運営され、多数の若手医師をご指導されたことに心より敬服いたします。

私がはじめて森尾先生と面識を得たのは2015年6月のこと、まだ助教に過ぎない私に東京医科歯科大学での大学院特別講義の機会を与えてくださいました。講義後の懇親会では小児医学研究と新生児領域での研究の進め方について熱くお話しされていたことが今でも記憶に残っています。

その後は小児科学会の学術委員会の委員としてご推薦いただいたり、AMED班会議でお会いした際には研究の進め方について細々と聞き出して指導していただいたりと、異なる教室に所属しているとは思えないような深いお付き合いをさせていただきました。とくに日本医学会連合「ゲノム編集技術の医学応用に関する検討作業部会」の委員でご一緒させていただいた際には、この技術の発展が最も影響を受けるであろう小児医学の代表のひとりとして意見書のドラフト作成を命じられて途方に暮れていた私に様々なアドバイスをいただき、とても頼りにしていたのを思い出します。「一度オンラインで話し合いましょう」と言われて日程を合わせておきながら、私の3人目のこどもの出産と重なってしまい、あわててキャンセルさせていただいたことや、議論を進めている最中に中国の研究者がゲノム編集された受精卵から双胎女児を生み出してしまったというニュースが飛び込んできたのも、強い思い出として残っております。それからも小児科学会でのプログラム企画の立案、ゲノム編集ホームページの作成などたくさんの仕事をご一緒させていただきましたが、そのあいだに森尾先生の教室ではNature ImmunologyやScience Immunologyなどの一流紙に続々と発表され、うれしいやらうらやましいやら、ますます尊敬の念を強くしておりました。

森尾先生はスマートで頭の切れがよく、それなのにとても温かで優しくて親しみやすいという、明晰な頭脳とすばらしい人格を併せ持たれているたぐいまれな指導者でいらっしゃいました。私は東京と大阪という遠い距離にあり、またそれまでの経歴においてまったくの接点もありませんでしたが、森尾先生のお人柄に接してすぐに勝手に親しみを感じ、まとわりついてしまいましたが、そんな若くて無名の私に対して様々なチャンスとアドバイスを与えて下さいました。まだまだお若いと信じ込んでおりましたが退官されるとうかがい心から寂しく感じております。

森尾先生、本当にありがとうございました。寂しくはありますが、ご実家は大阪にあるとうかがっております。退官後は大阪でご一緒する機会が増えるのだとすれば、それはそれでうれしいことかもしれません。これからもぜひご指導の程よろしくお願い申し上げます。