退任に寄せてのメッセージ

中井 清人先生

なかい きよひと

厚生労働省 医薬品審査管理課長

東京医科歯科大学大学院発生発達病態学分野教授森尾友宏先生の御退官に際して、一言お祝い申し上げます。

私と森尾先生とのお付き合いは、再生医療製品の審査を担当していたときと、ワクチンの市販後安全対策を担当していたときになります。特にコロナ発生から今年の7月まで3年以上にわたり、森尾先生に厚労省のワクチンの安全対策にご尽力頂きました。

森尾先生は、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会の部会長として、薬事・食品衛生審議会安全対策調査会長の岡明先生と一緒に両審議会合同部会を仕切って頂きました。コロナワクチンは、新モダリティとしてmRNAワクチンが導入され、その副反応や効果などに極めて関心の高いものでした。この合同部会においては、当初、2週間に1度の頻度で、報告された副反応や海外規制当局の公表資料などをもとに、ワクチンの安全性を評価して、必要な安全対策を講じるという役割を部会長として担っていただきました。

当初、ワクチンの副反応が報告されると、厚労省が全てプレスリリースを行っておりましたが、その際に、森尾先生には無理をお願いして、その都度、コメントを頂いて公表しておりました。私自身も驚きましたが、極めて好評でして、専門家の評価を得ることで冷静に対応することが出来たと評価を頂きました。その後も、ワクチンによる副反応などは、審議会において専門家の評価を踏まえて公表することとなりました。この様に落ち着いて評価を行って、専門家からわかりやすく国民に公表するという対応になったこと、これは森尾先生の温厚な人柄とリーダーシップによってなされたものです。おおげさではなく、日本のワクチンの信頼性向上に大きな影響を与えており、心から感謝しております。

また、これらの対応について、論文にて公表すべきとご指導をいただき、The Lancet Regional Health - Western Pacificに掲載されました。これも森尾先生、岡先生のご指導によるものです。日本の行政対応を世界に発信できたことは極めて大きなことだと感謝しております。

最後に、御退官と言うことではありますが、森尾先生には、まだまだ、ご活躍をいただき、引き続きご指導を賜りたいと想います。人生百年時代と言いますけれども、益々のご活躍を祈念申し上げます。