森尾先生との出会い
大変お世話になった森尾教授のご退任に際し、簡単ではございますが御礼の言葉を述べさせていただきます。私はウイルス学が専門で、特にEBウイルス(EBV)の基礎研究に従事していました。1996年に山口大学から東京医科歯科大学に異動し、難治疾患研究所の山本興太郎教授のもとでEBVとT/NK細胞の相互作用の研究を始めました。その研究に必要となるT細胞の増殖法を習う過程で免疫療法によりウイルス感染症の治療ができる可能性があることを知り、山本先生と共に小児科の矢田純一教授のところに共同研究のお願いに伺いました。その際、矢田先生から「同席している森尾先生と共同研究を進めてください」との前向きなお言葉を頂戴し、森尾先生との感染症に対する免疫療法の共同研究が始まりました。
森尾先生から学んだこと
共同研究を始めるに際して森尾先生から、患者さんの細胞を使った免疫療法を実現するためには治療効果云々の前に使用する細胞製剤の品質管理・安全性の確保が極めて重要であると教えて頂きました。その後、小児科の水谷教授・森尾先生のご尽力のより他大学に先駆けて治療用細胞の無菌培養施設として細胞治療センターが設立され、森尾センター長のリーダーシップのもとで他の大学に先駆けて品質マネージメントシステムISO9001の認証を取得して、再生医療を含む細胞治療の拠点となる現在の輸血・細胞治療センターへと発展していきました。生きた生体材料を原料とする細胞製剤は微生物安全性を確保をすることが難しいため、微生物学が専門の私の研究課題としてウイルス・微生物の網羅的・迅速検査系の開発を始め検査系の実用化に繋げることができましたが、必要な微生物種の選択や必要なスペックなどに関する森尾先生のご指導がなかったら、他の施設に誇れるような検査系は到底完成することはできなかったでしょう。
森尾先生への感謝の言葉
私が東京医科歯科大学に在職した28年間のほとんどの期間を森尾先生と共同研究をさせて頂きましたが、思い返してみると細胞治療やEBV研究の重要な時々に適切なご提案やご助言を得られたことが研究の発展につながったと改めて感じており、本学での研究生活を全うできたのも森尾先生のおかげであり感謝の念に堪えません。今後も多方面に渡りご活躍になると思いますが、引き続き宜しくお願い致します。