森尾友宏先生、発生発達病態学分野教授ご退任、誠におめでとうございます。
2003年に入局して以降、臨床、研究、教育のみならず、医局管理・運営などを通じて、多くのご指導を賜りました。森尾先生は、断定的な指示を出すことは殆どなく、私(達)の自律自考や主体的活動を待ちながら導いてくださることで、思考を止めず成長し続ける機会を頂いたように思います。時に謎かけや禅問答のように思えたやり取りの中に、多くの示唆が含まれており、後に「ここにつながるのか」と気付くことが少なからずありました。
数多くの学びの中で、森尾先生の「目」と「見ること」への意識がとても印象的でした。驚く程広く医局や周囲を見渡している視野、本質に着眼し先の先までを見通す視点、多角的に事象を見据える視座、そして周囲の視線と与える影響に配慮した「見え方」への意識など、いつも驚嘆するばかりでしたが、偏狭に陥ることなく世界に向けて正道を歩むリーダー像は、私(達)にとっての偉大な道標でありました。全てを見透かされているような緊張感を感じると同時に、孤独な苦境に苛まれる時に、いつも見ていていただけていることが何よりの心の支えになりました。
教授に就任されてからも、宴会の余興で医局員の悪ふざけにもお付き合いいただき、幾度となく仮装していただきましたが、学生や若い医師との触れ合いを大事にされ、顔を合わせて意見を聞くことを楽しんでいらっしゃったこともまた印象的でした。常に周囲全体に気を配り、かけられる労いや感謝の言葉も、皆を鼓舞し導く言葉も、リーダーシップの在り方を私(達)に示してくださったと感じています。
東京医科歯科大学小児科は、大きく成長し飛躍しつつあります。森尾先生のご指導の下で育った医師が、これからの小児科を、そして日本だけでなく世界の小児医療をリードしていく姿を、今後も見守っていただきたく存じます。私のような出来の悪い変わり種を、今日まで我慢強くご指導いただいた御恩を忘れることなく、(先生のようにスマートにはできませんが、私なりに精一杯)後から来る方達に還元していきたいと思います。
ご退任後の益々のご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げます。今後とも大所高所からのご指導の程、よろしくお願いいたします。